2008年6月29日 (日)

頭のうちどころが悪かった熊の話

きましたどまんなか!

頭のうちどころが悪かった熊の話

安東きみえ(理論社)

ジャケ買いならぬ装丁買い.下和田サチヨの装画(特に熊のあたまのたんこぶ)にぐっと心をつかまれて手に取ったんだけど,内容もすばらしかった.

「人生について考える7つの動物寓話」

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この毛虫はなんとささやかに,しかしほこりをもって生きていることだろう.熊は毛虫のことをとても素敵だと感じた.できることならここで毛虫といっしょに暮らしてみたいものだとさえ思った.しかし今はレディベアをさがさなければならない.

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ことばが美しくて,挿し絵があたたかくて,感動で泣けてくる.

毒もあるんだけど,それでも浄化される気がして,1頁ごとに心を揺さぶられながら読み進めた.

人生の意味,友達,大切な人,ぬくもり,見つけてもらえること...

宝物がまたひとつ,ふえました.

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2008年5月18日 (日)

先生はえらい

先生はえらい (ちくまプリマー新書)

内田樹.

「えらい先生」っていうのは,もともとどっかにいるもんじゃなくて,学ぶ人が発見するもんだと.

私にとっての「尊敬できる先生」と,誰かにとってのそれは同じじゃない.

うっかり「(形式的な意味での)先生」になっちゃった自分にとっては,なんだかほっとするような,「学ぶ人」としての自分にとっては,素直にうなずけるような,そんな内容だった.

10代に向けて書かれた本らしいが,10代の頃の自分には,この本の意味がきっとわからなかったと思う.大人になってよかった.

わたくし,「先生」を発見する能力はけっこうあると思うんだけど,どうかしら?

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2008年5月 9日 (金)

ちぐはぐな身体(からだ)

ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

鷲田清一.

副題の「ファッションって何?」というのがその時の自分の問いそのものだったので,迷わず購入した.

だが,その問いに対する自分なりの答えがみっかったということもあり,しばらく本棚の「まだ読んでないコーナー」に収まっていた.その後に購入した「てつがくこじんじゅぎょう<殺し文句>から入る哲学入門 鷲田清一×永江朗」のほうを,先に読んでみたりして.

昨日の夜,何の気なしに,寝る前にベッドで読もうと手に取ってみたところ,面白くって文庫本の半分まで読み進め,朝起きてからまた残りの半分を読んだ.

目からうろこの大興奮.

これまで衣服を「外側から」眺めていたことに気づく.どうしても,これを着ている私は他人にどう見えるのか,ということを抜きにしては,考えられなかった(人にどう見られるかなんて,どーでもいいじゃん!,なんて言いながらも).

しかし「外側から視点」の根底には,『<像(イメージ)>としての身体』という「わたし」の問題が確かに存在するのだ.

『ひとは,<像(イメージ)>としての身体のもろさを補強するために,いろんな手段を編み出すことになる.つまり,<わたし>というものの輪郭を補強することで,じぶんのもろい存在がかもす不安をしずめようとする.』

自分のからだを自分のものとして掴み取るための挑戦が,身体の加工であり,ファッションなのだ.

そう考えると,自分のなかにあった「私ってなんなの?」という問いと,「なぜこんなに服が,からだが,気になるの?」という問いが,ぴったり重なって表裏をなしていることに気づけるし,それがごく自然なことだということもわかる.

私は,洗濯が好きだ(たまに溜め込むけど).洗いたての白いシャツに袖を通す瞬間が好きだ.

つまりそれは,不安定な私の輪郭を確認するという作業なんだろう.着飾ることは軽薄なことととらえられがちだけど,そうじゃない.そのことに少し,勇気づけられる.

鷲田清一という哲学者の紡ぐ言葉は,ものすごく美しい.

『飾ったり,突っぱったり,ひねくれたり,ふてくされたり・・・.ファッションはいつも愉しいが,ときどき,それが涙に見えることがある.』

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2008年5月 1日 (木)

デザインの輪郭

デザインの輪郭

深澤直人.デザイナーのエッセイ.とてもよい本.

デザイン実践の教科書とは,たぶん対極にある.

最近,教科書的なものを一生懸命読んでいて,あぁ現場を知らないと,実際にモノを作る経験をしないと,デザインの世界には近づけないんだなと,ちょっと寂しい気持ちを感じていたところだった.これから現場に出るというのは,いくらなんでも非現実的だし,その前にいまの自分の道を究めなくっちゃね.

でもこの本を読んだら,そっかデザインって「ふつう」の生活に寄り添うものなんだなと,すとんと納得できて嬉しかった.

なかでも特に面白かったのは,「俳句」にまつわる対談.モノのデザインも俳句も,「人」をうつす鏡なんだと理解した.

モノでも俳句でも,なぜそれに心をつかまれたかを考えるということは,私ってどんな人なのかと考えること.

俳句じゃなく,短歌だけど,最近心をぐいっとつかまれたのがコレ.

「膀胱炎になってもいいからこの人の隣を今は離れたくない」柴田瞳

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2008年3月25日 (火)

誌上対決?

AERAの先週号.特集『見た目10割の法則/東大に流れる京大「地元秀才」』.

ふだんはあまり手に取ることはないが,読もうと思っていた本をかばんに入れ忘れていたので,空港にて購入.特集の内容も気になるところ.

しかし,特集がどうこうよりも,養老孟司さん(コラム)と茂木健一郎さん(山本モナさんとの対談)の微妙なズレに笑う.

養老さん→『自給率にはカラクリがある』.農水省の役人に「自給率アップのキャンペーンはあなたがたの生き残り策でしょう」と言ってやった.

茂木さん→「日本で威勢のいいこと言ってる人に僕が言ってあげたいのは,食料自給率40%の国が何を言っても無駄だってことなんです」.

茂木さんは養老さんの後継者ってことになっていたような.同じ雑誌のまったく別の記事で,なんとも面白いリンク.

そもそも食料自給率ってのはいったい何の指標なんでしょう.いや,何の指標にしたいんでしょう.

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2008年3月18日 (火)

3連続ヒット

どれもすごく面白かった.特に大学生など若い人にオススメしたい,軽めだけれど(つまり読みやすく)内容は充実している3冊.

ひとりでは生きられないのも芸のうち

「ひとりでは生きられないのも芸のうち」内田樹

内田先生のブログが元になっているのでいくつかの内容は記憶にあるものだったが,全体として,なんとも説得力のある論考だ.まっとうな大人がまっとなことを言ってくれる.爽快.

『私たちの社会のさまざまなシステムを機能不全に陥らせているのは,この「ちゃんと仕事をしてくれる人がどこかにいるはずだ」という無根な楽観です.』

『誰かがなんとかしてくれる』っていう楽観は,確かに自分のなかにもあって,「ゴーンさんみたいなカリスマ性のある誰か偉い人(うちで言うと,学長とか)が,この事態をどうにかしようと指揮してくれるだろうから,自分はそれに従ってればいいんじゃないの?」と思っていたことを自覚させられてしまった.

でも近ごろは,「変えたかったら自分で動くべきなんだね.そのほうが楽しいし」という認識に変化してきたところだったから,「あんたのそれ,OKよ」と言ってもらえたようで,なんだか嬉しい.

ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学

「ウチのシステムはなぜ使えない-SEとユーザの失敗学」岡嶋裕史

情報システムの顧客あるいはユーザ向けに書かれているが,これからSEになろうっていう人にとっても非常に有益であろう情報が盛りだくさん.

要は,ユーザとSEの関係において,コミュニケーションと,お互いをわかりあおうとする努力と,主張すべきところは主張する勇気が大切っていう極めてまっとうなことが書かれている.

しかし,その書きっぷりがいい.ちょっと自虐的にさえ感じるような表現で,見えづらい実態を記述していく.あまりにあっけらかんと書かれているので,余計にその深刻さが伝わってくる.

特に第三部の「SEとユーザの胸のうち」は,飛行機が函館空港に着陸しても読むのを止められなかったくらいスリリング.

同世代男性にありがちなガンダムネタもちらほら(笑).

脳を活かす勉強法

「脳を活かす勉強法-奇跡の「強化学習」」茂木健一郎

1時間で読める軽さだが,とにかくわかりやすくて,やる気にさせる.

まずは,本の作りがうまい.自分の体験を中心とする文章のなか,要所要所に「脳機能」の説明を入れてくる.そして各節の最後には「ポイント集」.一般向けってこうでなくちゃねと,大変勉強になった.

新しい知見を紹介している訳ではないし,茂木さんの本は内容がかぶってることも多いのだが,そんなことはどうでもよくなってしまうくらい,前向きになる.

たぶんその理由は,「勉強しろ」ではなく「(脳の仕組みを知って)気持ちよくなれ」ってことを伝えているのと,その「気持ちよさ」について,「あぁ,あれだ!」ってな具合に自分の体験にもとづいて納得することができるから.

ちなみに...今回は3冊連続の良書だったが,打率はそれほどよくない.駄作も引いているけど,紹介してないだけです.

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2008年3月15日 (土)

愛すべき娘たち

愛すべき娘たち (Jets comics)

よしながふみ.

なんかもう,参りましたって感じ.

誰よりも,自分と母親の関係に悩み,母親としての自分に悩んでいたあの人に読んでもらいたいと思った.「家族」がいちばんしんどいつながりだけど,彼女をひとりの人間として見れたら,それでも愛おしく感じられるんじゃないか.

Amazonのレビューにあった「こういった作品も描かれると、そのオールマイティーぶりに嫉妬心まで沸いてきます。」という言葉に,激しく同意.同世代だから?

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2008年2月28日 (木)

脳は美をいかに感じるか

脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界

神経生物学者が芸術の世界に切り込んだ傑作.とにかく読みやすく,面白い.翻訳も極めて優れていると思う.高いし分厚いけれど,脳や芸術作品のカラー図版がたくさんあってわかりやすいので,満足度が高い.

授業で使える!とか,なるほどこういう共通項か!とか発見しつつ,付箋紙をぺたぺた貼りながら読み進めた.

認知心理学の知見としてあたりまえに感じていることでも,芸術という世界に結びつけると見え方がまったく違ってくる.この結びつけ方に説得力があるのだ.

芸術論ってしろーとの自分には無理って思ってたけど,こういう科学的な芸術論があるんだね.感動.

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2008年1月 4日 (金)

買った本

年末から年明けにかけて購入した本.

・きのう何食べた?(1):よしながふみ(講談社)
→おいしいごはんが出てくる本や漫画が大好きな人にはおすすめ.ゲイカップルのまったりした感じがいい

・大奥(3):よしながふみ(白泉社)
→痛い感じはまだまだ続く.うまい

・怪しい科学の見抜き方-嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説:ロバート・アーリック(草思社)
・脳は美をいかに感じるか-ピカソやモネが見た世界:セミール・ゼキ(日本経済新聞社)
・情報社会を知るクリティカル・ワーズ:田畑暁生(フィルムアート社)
・発達障害の子どもたち:杉山登志郎(講談社)

いつ読むんだか.

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2007年9月30日 (日)

造顔マッサージ

田中宥久子の造顔マッサージ (DVD付)田中宥久子のDVDブック.どんなもんかと興味があって,買ってしまった.えへ.

2100円という値段が高いのか安いのかよくわからないが,内容はけっこうよかった.

マッサージで10年前の顔に戻るということだけど,ふだん顔のマッサージなんかしていない人が,DVDをみながらあれだけぎゅーっとマッサージしたら,そりゃ効果あるだろうな,と思う.

ただし重要なのは,その「あたりまえ」のことをていねいに教えてくれるってところ.ひとつひとつの行為を理解しながら進めていけるので,それが効果にもつながるのだろう.

まじめにやると,けっこう気持ちよい.

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2007年8月26日 (日)

フラワー・オブ・ライフ

フラワー・オブ・ライフ 4 (4) (WINGS COMICS)よしながふみ作品.

読み終わってから帯を眺めていて,はじめてこの第4巻で「完結」だということに気づく.え?,あ?,えぇ!?ってな感じ.読み返してみたら本当に完結してた.これからも彼らの高校生活が続いていくと思わせるのがねらいならば,見事にはまってしまったということか.

感想はちょっと書きにくい.高校生活のなかの小さな事件や心の動きを描いているからだろう.個々のキャラクターや出来事は自分の高校生活とはかけ離れているけれど,その時代の苦しさや楽しさについては十分に共感できるものだった.ほんと,ドロドロとキラキラだよね,高校生活って.

ひとつだけハッとしたのは,春太郎が辞書のなかに「flower of life」の例文を見つけたところ.そいういう意味のタイトルだったのかと...

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2007年7月 6日 (金)

案の定

穂村弘を読んで,恋に落ちる.

とはいえ,何冊かのエッセイから著者自身に関心を持ったということでもなく,そこに自分を発見して,なんか楽しい気分になった,という感じ.ぼんやりとした自分自身に,くっきりとした輪郭を持たせてくれるものは,ありがたい.

ま,結局のところ自分好きつながりというわけで.

世界音痴もうおうちへかえりましょう 現実入門

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2007年6月18日 (月)

ぼくには数字が風景に見える

ぼくには数字が風景に見える

まず,装丁がすごい.100%ORANGEの作品.書店で思わず手にとってしまった.

著者はアスペルガー症候群かつサヴァン症候群で,共感覚のある自閉症.彼には世界がどう見えているのか,ものすごく丁寧に記述されている.

まだ全部読んでいないのだけど,読み始めてすぐに,これはすごい作品だと感じた(内容の感想は後日).

翻訳もすごい.「Born on a Blue Day」を「ぼくには数字が風景に見える」という邦題にするセンスも素晴らしいのだが,さらに本文のみずみずしさは秀逸である.

大学院の授業で,K先生の「本づくり」に関するかなり面白い話をたくさん聞いてから,本の見かたが少し変わった気がする.美しさは細部に宿るということ.

そういう意味で,最近手にした本のなかであまりよくなかったのは,「最悪の事故が起こるまで人はなにをしていたのか(草思社)」.仕事絡みで関心があってAmazonに注文したのだが,手に取ったときになんだか気持ち悪い感じがした.内容とは別次元だと思っていたのだが,K先生によると,相関は高いらしい.

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2007年6月 4日 (月)

ぼく,オタリーマン。

ぼく、オタリーマン。ちょっと期待していたオタクっぷりとは違っていたのだけれど,けっこう面白かった.残念ながら絵はちょっと苦手.でも「理系男の生態」って部分は,身近にいる人たちとリンクしていて,ぷぷっと笑える.

幸せになってほしいな,と心から思いました(笑).

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2007年5月20日 (日)

となりの801ちゃん

うらのカフェでお昼ご飯(甘エビの唐揚げ+生オニオンのパスタ!)を食べながら,太田光・中沢新一の「憲法九条を世界遺産に」を読み始めた.うむむ,面白い.こっちはまだ読み終えていないので後日取り上げるとして...

となりの801ちゃんその反動か,本屋で思わず「となりの801ちゃん」を買ってしまった.「僕は28歳、オタク会社員。付きあってる彼女が腐女子でした。」だって.

どっかの書評で取り上げられていた「ぼく,オタリーマン」を読んでみたいとは思っていたのだが,その前に,本人がオタクなだけでなく彼女が腐女子という,ある意味幸せカップルなマンガに手を出してしまいました(^_^;;;).

マンガ自体も面白いんだけど,登場する用語に解説がついているのが大変よい.だってそのままじゃわからないんだもん.

これ読むと,庵野監督&安野モヨコさんのカップル(監督不行届by安野モヨコ)が,わりと健康系に見えてくるから不思議だね.

それにしても,腐女子的世界がこれだけ一般化しているのには驚いてしまう.高校時代(えぇ?,20年近く前なのか!),クラスメイトの数人が必死に隠しながら男×男のマンガや小説を書いていた頃とは,隔世の感がある.当時そんなことしている人は変わり者って扱いだったけど,今じゃなんてことはないんだろうね.

それでも801ちゃんは擬体していて,ふだんは普通の女の子に見えるらしい.萌え対象に出会うと,背中のチャックがぱっくりあいて801ちゃんが飛び出してくる.自分の彼氏の「そううけほん」を欲するとは,恐るべし(笑).

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2007年5月19日 (土)

終末のフール

終末のフール「日本沈没」を観てなんだかなーとあれこれ考えていたら,伊坂幸太郎の「終末のフール」についてblogに書いてないことに気づいた.

ベッドに入って1章読んだら,一気に読み進めるのがもったいなくなって,それからは寝る前に1章だけと決めてゆっくり読んだのだった.いつもなら一気読みしてそのままの勢いでblogに書くのだが.

8年前に地球が隕石によって消滅すると発表があってから5年が経過.残すところあと3年という状況のなかで,人はどう生きるのか.

あと3年になったところで,パニックと狂気は落ち着いてくる.安易に大きな奇跡は起こらないが,生きようとする人の力強さと小さな奇跡が,大切に大切に描かれている.やっぱり好きだなぁ,伊坂幸太郎,とじんわり感動.

どの話もすばらしくよいのだが,あえて一番をあげるなら「鋼鉄のウール」.

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2007年5月 1日 (火)

ナイトメアー心の迷路の物語

ナイトメア―心の迷路の物語
書店で久しぶりに小倉千加子の名前を目にして,迷わず購入.

あっという間に読める量だが,なんだかおどろおどろしくて,息苦しくなる.何か妙にひっかかるものがある.フィクションらしいが,あまりにもリアル.

ナイトメアと名付けられた女子学生と対峙する語り手が自分と重なり,気がつくとナイトメア自身が自分と重なってくる.

「生きにくさ」をこういう方法で描くことができるのか,としばし感動.

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2007年4月15日 (日)

我らクレイジー★エンジニア主義

我らクレイジー☆エンジニア主義斜め読みしただけですが.

リクナビNEXT『Tech総研』に連載されたもの.なんとなく,軽い読み物として購入したのだが,うーむ.クレイジー★エンジニア(まん中の★がなんとも恥ずかしい)というのは,こういう方々なのですか.

エンジニア関係の人が読んだらけっこう面白いのかもしれない.でも,エンジニアじゃない自分には,ちょっと「別次元の人たち」すぎて.NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」のほうがしみるというかなんというか...左官の挾土秀平さんの放送回なんか,ちょっと感動してしまったくらい.こういう描き方とは,それこそまったく別次元.

それでも,エンジニア向けのメッセージとしては,こういう圧倒的なスゴイ人のスゴイ話っていうのが受けるんでしょうね.うぉーオレも負けてらんないぜ,とか思うのかな.それはそれで,素敵だと思いますが.

こんなふうに思っちゃうのは,自分のまわりにあまりにもスゴイ人がいすぎて,なかなか「自信をもつ」ことができずにいるからなんだろう.スゴイ人の話なんてもうわかっとるっちゅーねんという感じ.

いや,へこんでるのがらしくないのはわかってるんだけどね.もうしばらくひねくれさせてくれ.

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2007年4月 8日 (日)

われらはみな,アイヒマンの息子

われらはみな、アイヒマンの息子

哲学者ギュンター・アンダースによる,アドルフ・アイヒマンの息子,クラウス・アイヒマンにあてた公開書簡.

教養の授業でアイヒマン実験を紹介することがあるため,本屋でタイトルを見て,思わず手に取った.

しかしなぜ今,アイヒマンなのか.そう思いながら読み進めるうちに,「われらはみな,アイヒマンの息子」というタイトルの意味と重さに,痛みのような感覚が生じた.アウシュビッツは過去の一事例として無害化されつつあるが,私たちは今確かに,アイヒマン的世界に取り込まれているのだ.

心理学のテキストなどでは,ある種のヒエラルキーのなかで無力な個人(中間管理職)が「職務に忠実」であった結果として,残虐な行為に加担することが「誰にでも」起こりうるとされている.人間一般の傾向として,そのようなことがあり得るのだ,と.

しかし哲学者の論考は,その先に向けられている.アイヒマンの息子として,その行為と徹底的に向き合うべきだと呼びかける.

文中にたびたび登場する「クラウス・アイヒマン」という呼びかけの言葉は,そのまま読み手への呼びかけとして効果的に機能する(少なくとも自分にとっては).アイヒマン的世界の存在を認識し,すでにそこに絡めとられているのを自覚することは,「われらみな」にとってチャンスなのだと.

ここまで考え尽くして,なお人間や世界に絶望せずにいるというのは,すごいことだと思う.自分に決定的に足りないのは,こういうことなんだろう.無知や無関心を畏れながら,しかしそこから踏み出せずにいる.

高橋哲哉の解説「機械化する世界と想像力」が非常にわかりやすい.書簡自体は原文に忠実なためか,やや難解な言い回しや表現があるのだが,解説を読んでから再読すると,すっと頭に入ってくる.

本年度の推薦図書に決定.でもうちの学生,誰も読まないだろうな...

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2007年4月 6日 (金)

下流志向

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち売れまくっているようで,本屋の入り口どまんなかに,平積みになっていた.Amazonのカートに入れてあったのだが,思わず本屋で買ってしまった.

「学びからの逃走・労働からの逃走」をテーマに,これまで各方面でなされてきた問題提起を,横断的かつ統一的に考察している.

あまりにも的確,と感じたのは,まさに自分のありようをそのまま,丸ごと指摘するような内容であったため.

自分のこと言われているようで,いちいちドキッとした.

その時代のなかで「生存」するための最適解を求めた結果として,「それ勉強して何になるの?」とか,「なんで働かなきゃならないの?」という問いが当然のように出てくる.現象としては問題だが,その発生過程は非常に合理的.

小倉千加子の「結婚の条件」でもやはり,生存のための合理的な選択として専業主婦志向の傾向が強まっていることが書かれていた(と思う.たぶん.この本いま父に長期貸出中なので,詳細は不明).

いずれにせよ,怠惰ではなく,必死なのだ.

その根っこのところに,子どもが,労働主体としてではなく消費主体として自己を確立している現状があるという論考には納得させられた.「等価交換」を認知(判断・思考)の基盤としている以上,「それって私にどんなメリットがあるわけ?」という問いは至極まっとうな訳で,その枠組みのなかで必死に「有利な交換」を成立させようとしているということを頭ごなしに否定しても意味がないだろう(逆に誰かに否定されても困ってしまう).

自分のなかにもその積極的な逃走の根源を見てしまった人間が,一方で大学という高等教育機関においてよりその傾向が強まっている学生たちを相手にしているというのは,なんとも話がややこしい.だって客観視できないんだもの.

いきなり認知スタイルを変えよって言われても困る,というのが正直なところ.でも,その問題に気づいた以上,何か伝えなくてはならないという立場(?)もある.

子どもにとって,すぐに手にすることのできない知性と教養が,交換対象としての魅力に欠けるということは理解できる.そこで自分にできることは,知性と教養がないまま年齢だけは大人になってしまったことに気づいたときの恐怖を語ることくらいだろうか...

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2007年3月 1日 (木)

働くことがイヤな人のための本

働くことがイヤな人のための本出張中に読んだもの.いや,タイトルにひかれた訳ではなく(笑),中島義道だからってことで.

前書き読んだあと,目次で解説が斎藤美奈子だということに気づき,本編読む前に解説を読んでしまった.よりいっそう高まる期待.だって斎藤美奈子節が炸裂してるんだもの.この本,「トキがパンダの心配をしているようなもの」だって.切れ味するどい.

まさに期待どおりの内容で,十分に楽しめた.何らかの解答が得たくてこの本を手に取った人には気の毒なくらいのカオス.

とにかくぐるぐる悩み,深みへとはまっていく.ただ一点明快なのは,人は必ず死ぬという命題だ.そして自虐的に,排他的に,死に向かって「よく生きる」ということが語られる.

悩むことが生きることの本質だとするならば,ここまで徹底して悩めるというのはものすごい生き方だ.かっこいいとは思わないし,見習いたいとも思わないけど,その能力には感動する.

ある意味,内田樹とは対極にいる人だと思う.だからなおさら,希少な存在として保護されているのだな(トキのように).

それと,斎藤美奈子の解説とセットにすることでこの本のおもしろさがいっそう際立ったのだと思う.「トキでもパンダでもない,ゴキブリかネズミみたいなあなたや私」も楽しめる一冊.

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2007年2月17日 (土)

ピタゴラ装置DVDブック1

ピタゴラ装置DVDブック1最近のNHK教育テレビは,イケてると思う.

NHKに対する批判は強いし,同意する部分も多いのだが,ピタゴラスイッチのようなNHKにこそやって欲しかった内容の番組を見ると,思わず現場の方々を応援したくなる.

このDVDの魅力は,余計な装飾いっさいなしに,淡々と作品紹介し製作現場を見せるところだろう.画面に近づいて食い入るように何度も見てしまう.

小さい頃,これと同じようにビー玉がころころ転がっていく装置を作ろうとしたことがあった.あまりに大掛かりになってしまい,途中で断念したのだが,そうか,フィニッシュをきちんと考えてあるともっと面白いものになったんだな,あれ.

もうすぐ2巻目が出るらしい.Amazonで予約!

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2007年2月13日 (火)

フラワー・オブ・ライフ

フラワー・オブ・ライフ (1)授業で使うために,多湖輝の「頭の体操」関係を探して本屋へ.結局適当なのが見つからず,気づいたらアル・ゴアの「不都合な真実」を小脇に抱えてレジに向かっていた.

出会いとは不思議なもので.

そのレジ前にあったのが,よしながふみのコレ.Amazonのカートに入れっぱなしになっていたのだが,ここじゃなんと平積みですよ!

ここで会ったのは運命だと思い,3巻まとめてお買い上げ.

一気読みしたけど,もう笑いまくり.それもばか笑いよ.ヘンな奴ばっかりで,あったかくて,みんなのことが好きになった.リアルさのさじ加減がすごくよくて,ありえん!って笑いながらも,ちょっぴり自分の高校時代を思い出したりして.

あー,ほんとこの人,すごいよ.ただものじゃぁない!

真島の徹底したオタクぶりもいいし,翔太のぷにゅっとした感じもいい.それにハルくん!

青春時代に少なからず影響を受けた,山田詠美の「僕は勉強ができない」の主人公,秀美くんを思い出した.ハルくんは秀美くんのように聡いわけでは決してないのだが,どこか似ている気がする.かっこよさが似ているのか.

もうよしながふみにやられっぱなし(笑).

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2007年2月 8日 (木)

機動戦士ガンダムさん

機動戦士ガンダムさん さいしょの巻大和田秀樹のガンダムパロディー本.シャアはどこまでもいじりがいがあるのだろう.ここでもめちゃくちゃにされてる(笑).またもやセイラさんが気の毒です.

四コマ漫画は個々にかなりおもしろかったのだが,いちばんは「30過ぎてもガンダムガンダムって・・・どうかと思うねボカァ!」というシャアと,「いけません大佐・・・」というララァの表紙だったような気が.

届いたAmazonの段ボール箱をあけてびっくり.持ってる本注文してた.

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2007年1月 9日 (火)

文壇アイドル論

文壇アイドル論著者は斎藤美奈子.いま手元になくて詳しいことは書けそうにないのだが,なかなか面白かった.

文壇のアイドルとして「村上春樹,俵万智,吉本ばなな,林真理子,上野千鶴子,立花隆,村上龍,田中康夫」の8名が取り上げられている.

作品が解体されるというよりも,これらの作家たちをアイドルにした「時代」が批評の対象になっている.

やはり語り口が軽妙で,批評を批判的に読む,ということをしたいと思っていても,つい引き込まれる.ちょっと冷静になると,それは言い過ぎなんじゃない?とか,何を根拠に,と思う部分もあるけど,斎藤節は相変わらず心地よい.少し辛辣すぎるところもあるし,口が悪いって感じるような表現も多いのだが,読み進めるうちに何か爽快な気分にさせるパワーがあるのだ.

随所で微笑も苦笑も出て,あっという間に読めてしまった.何よりメタファの選び方が秀逸.

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2006年12月 9日 (土)

渋谷

つい先日祖父が亡くなり,葬式という完全に商業化された儀式を目の前にして思ったのは,かつて見た藤原新也の写真だった.

ガンジス川を流れる亡骸.犬に喰いつかれる遺体.

父の本棚にあった一冊のなかの写真が,20年近い時間を経て,ここで鮮やかに思い出されるとは考えてもみなかった.その写真のイメージは,間違いなく,痛烈な憧れとして立ち現れたものだ.死に方への憧れというよりも,むしろ生きることへの真摯な気持ちだったように思う.

祖父の死を契機にして,ここのところ数日おきに妹とメールのやりとりをしている.同じ環境で育ったにも関わらず,家族に関する考え方が彼女とは決定的に違っていた.

私たちは両親には恵まれたのだが,その親の代との間には決定的な問題を抱えているのだ.

あまり愛されてなかったね,というが共通の認識だ.結局のところ,長女か次女か,どこの高校・大学に入ったのか,どんな仕事に就いたのかといった属性でしか,私たちは評価されなかったように思う.そんな関係を通じて,私が「血縁」ということをまったく重要視しなくなった一方で,妹は「なぜ家族なのに存在を認めてもらえないのか」という思いに,いまだ混乱させられている.

渋谷 そんななか再び,藤原新也の本を手にとった.

中盤から心拍数が上がり,涙が止まらなかった.自分自身をみつめてもらえない焦りや不安.たとえ負であったとしても,存在を認めてもらいたいという切なる願い.

現代には現代の,青年期における葛藤がある.それは,心理学の教科書なんか読んでも,見えてこない.

少女たちと語り合う藤原新也の存在自体が都市の寓話のようにも思えるが,しかしこれを読んで,どれだけの人が浄化され,必死に生きる自分を認めてあげられるようになることか.

写真というのは「いま現在の姿を肯定する行為」だという.絶えず否定され続けている若者たちの,いまを肯定し,存在を証明する.それをやってのける藤原新也は,すごい大人だと思う.

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大奥 第二巻

大奥 2 (2)本屋をうろついていたら,発見.もう出ていたんですね.

第一巻の気持ちのよいお話からは,予想しえない内容だった.確かに第一巻でいくつも布石は打ってあったのだが,ここまで切ない展開になるとは.

なぜ大奥において男女が逆転したのか.春日局がそこにどう関わっていたのか.構成が緻密で,納得させられると同時に,胸をつかまれるような痛さがあった.とにかく,暗くて痛い.

よしながふみはただ者ではないな.「愛がなくても喰ってゆけます。」の冒頭に,「YながFみ 男同士のアナルセックスなどを描いて生計を立てる31才」とあって,それを言っちゃあみもふたもないよって感じでかなりおかしかったのだが,なんとまぁ,この人の才能はすごいぞ.

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2006年12月 5日 (火)

GO

GO遅まきながら,金城一紀の「GO」.まっすぐでクール,骨太で知的.とてもよい小説だと思った.

在日朝鮮(韓国)人の主人公が日本人の女の子に恋をする.彼を取り巻く状況は,かなり厳しい.「無知と無教養と偏見と差別」.彼には,戦うべき相手がわかっている.

国籍ほど重いものではないにせよ,自分も「偏見と差別」を体験してきた.身内にも,外にも,敵は存在するのだ.「偏見と差別」の背後には「無知と無教養」が存在すること,そしてそれらには「知性」が圧倒的な力を持つことを,大人になってからようやく理解した.

しかしGOの主人公杉原は,若くしてそれを知っている.それだけ過酷な「偏見と差別」があるということだ.

「在日」というテーマの重さと,こそばゆくなるような「恋愛」の描き方の,バランスが絶妙.

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2006年11月21日 (火)

チルドレン

チルドレンふたたび伊坂幸太郎作品.

これも最高! 「死神の精度」くらい,いい.

誰もが魅力的なのだが,やっぱり陣内にしびれた.めちゃくちゃだよ,あんた.でも最高にカッコいい.

人物に引き込まれ,出来事に引き込まれ,気づいたらニンマリしながら読んでいた.「奇跡」なんてふだん,陳腐な言葉だと思っているんだけど,あぁこれも奇跡なんだなって,するっと受け止められた.くやしいけど,気持ちがあったかくなってしまった.くやしいけどね.

たまたま,BGMは栗コーダーカルテットの「ウクレレ栗コーダー」だった.なんか間抜けなんだけどカッコよくて,ニンマリしちゃうってとこが似かよっていた.相乗効果もあって,本も音楽も大満足.ものすごい幸せ.

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2006年11月 9日 (木)

出張の移動時間で読書

この数週間に読んだ本.直後に書いておきたかったんだけどね.

ラッシュライフ

オーデュボンの祈り

まずは伊坂幸太郎のラッシュライフ.いろんな人の人生が交錯する.読みながら,おっとそうくるか,というのを存分に楽しめた.他の作品とのつながりもあり,なかなかよかった.うむ.やはり恐るべき才能だ.

もうひとつは,オーデュボンの祈り.伊坂作品のパターンがなんとなくわかってきても,魅力的な登場人物や文体で,ぐいぐい引き込まれた.特に後半の,ばらばらだったパズルがつながっていくときの感覚は,しびれるくらいおもしろかった.これ,タイトルもよい.せつなくて,とてもよい.ちりばめられた要素を頭のなかで再構成しきれなかったから,時間のあるときに(いつだ?)もう一回読もうと思った.

ただこの2冊,前に紹介した「死神の精度」と「重力ピエロ」には及ばない気がした.伊坂作品が初めてだったから特に衝撃が大きかったのかもしれないけど.クールで知的ってところが,こっちのほうがだんぜん上.

スタイル・ノート

札幌出張からの帰りに読んだのが, 槇村さとるのスタイル・ノート.漫画「イマジン」や「おいしい関係」の,槇村さとるさん.

大人による「おしゃれ指南」的な本は数多くあれど,自分の感性にぴたっとくるのにはなかなか出会えないものだ.しかしこれ,ぴたっときちゃったんだな.

「己を知れ」ってメッセージがダイレクトで,気持ちいいくらい.

かっこいい女って,いるよね.自分のことをよくわかっていて,好きな人・ものがたくさんあって,とびきりのスマイルができる,姿勢のよい人.こういう人になりたいってのがはっきりしていると,進むべきおしゃれ道も見えてくる.

あたらしい教科書〈5〉結婚

そして,「あたらしい教科書」シリーズの「結婚」.結婚ということのあり方にいろいろと悩んでいた時期は過ぎ,自分なりの結論はとうに出ていたのだが,他の人がどう考えているのか,社会がどうなっているのか知りたくて買ってみた.

帯には「社会・法律・しきたり・家庭 4つの角度から結婚の意味を考える」とあったけど,特に「社会」と「法律」についてはよくまとまっていてわかりやすかった.やっぱりこれも,大学生くらいの人に読んで欲しい一冊だな.

ちょっと話は飛ぶけど,内田樹先生のblog にあった,

「制度的に強いられる性差を自然のものとして受け容れることに抵抗し、因習的な性別役割を拒絶しようとするふるまいを通じて、「因習的に構築されたのではない、より根源的な性差」が露出する・・・という一回ひねりのドラマツルギー」

という文章を読んで,目からうろこ.自分のなかの「結婚という制度への固執的な抵抗」は,なるほど,自分の根源的な女性性を露呈してしまっているのか.そりゃそうだな.男だったら,こんなことしつこく考えたりしないだろう.(内田先生のblogの内容は,もっと深いです)

KINO Vol.02 思考としての『ガンダム』

最後はこれ.京都精華大学情報館が出している「KINO」という雑誌の,「思考としてのガンダム」.

内容が充実していて,びっくりした.「ガンダム的思考」というのはよくわからないんだけど,富野由悠季もりだくさんで,おなかいっぱいになる感じ.満足度高し.

アムロとシャーのその後の人生を知るためには,ファーストガンダムだけではだめなのね.

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2006年10月21日 (土)

ZOO

ZOO〈1〉乙一,おついちと読むらしい.名字なの?,名前なの?(笑).友人おすすめの一冊.文庫版は2冊に分かれてるけど.

ファンタジー・ホラー小説というジャンルらしい.

「カザリとヨーコ」を読んだだけだが,独特のリズム感があり,たまに入るくだけた口調が面白い.

なんかと似てる感じがしたので,よく考えてみた.そうだ.父親の本棚にあって10代のころによく読んだ,星新一のショートショートに雰囲気が似てるような気がする.たっぷりの毒をわりと淡々とした文体で描き出し,最後にニヤリとさせるような,そんな感じだったと思う.

星新一の父親(星薬科大学の創業者)の名は「星一」.全然関係ないかもしれないけどね.

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2006年10月20日 (金)

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

機動戦士ガンダム THE ORIGIN (1)   カドカワコミックA大人買いとはこのことか.しかし,中途半端な大人なのでとりあえず5巻までにしておいた.

仕事山積みの週末に備え,クリームシチューを作るつもりで大量の食材を買い込んできたのだが,帰宅したらAmazonの箱が宅配ボックスに届いていたので,ごはんそっちのけで読みふける.うぅ,ランバ・ラル編の前半で終わっちまった.残りもソッコー発注だ.

読みながら,断片化していた記憶が有機的につながっていく興奮を味わった.そうそう,そうだったよ.忘れてたけど,この場面でこのセリフだ! 「ザクとは違うのだよ,ザクとは...」 ほんと,これ読まなきゃ一生思い出さなかったかも.

こうなると,ファーストガンダムのDVDボックスが欲しくなるねぇ.2巻あわせて51,975円なり(Amazon価格). とてもじゃないが,手がでない...orz 30代後半の大人をターゲットにした,いやらしい価格設定だ.

それにしても,安彦良和とトニーたけざきの絵がこれほどまでに似ているとは思わんかった.THE ORIGINを読みながら,途中でトニーたけざきのパロディに入っていってしまうような,へんな感じがした.これはこれで,おもしろい.

あわせて伊坂幸太郎と乙一の文庫本を数冊ずつ,かもめ食堂のDVDを購入.科研費の書類書かなきゃいけないってのに,困ったな.

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2006年10月15日 (日)

金子みすゞ

金子みすゞ童謡集なぜだかよくわからないが,10代のころからくり返し,ボロボロになるまで読んでいる本がある.フィツジェラルドの「グレートギャツビー」と高村光太郎の「智恵子抄」だ.

前者はおそらく村上春樹の「ノルウェーの森」から.後者はなぜ手に取ったのか記憶にない.しかしいずれも,宝物のような本である.

そしてまた,ボロボロになるまでくり返し読むだろうと直感したものがある.金子みすゞ,である.

前から知っていたのは「私と小鳥と鈴と」くらいだったが,童謡集を手に取って驚愕した.すごすぎて,何と言ったらいいのかわからない.

金子みすゞのようにまっすぐにはなれないけれど,金子みすゞを宝物だと思えるくらいには,まっすぐでいたいと思う.

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トニーたけざきのガンダム漫画

トニーたけざきのガンダム漫画どっかの書評を読んで,Amazonで購入.ペリカンお兄さんがいつ配達に行ってもいないのであきらめたのか,とうとうすぐに宅配ボックスに入れてくれるようになった.前からそうお願いしてたじゃん.

今回は漫画を中心に多数購入したのだが,そのなかでナンバーワンがこれ.

ファーストガンダムのパロディで,1ページに1つ以上の大爆笑ポイントあり.これを読まなかったら一生思いださなかったであろうシーンやセリフが満載で,かなり感動してしまった.

いやはや,セイラさんの変貌ぶりにはまいりました.

最初のTVシリーズはなんと1979年から80年とのこと.食い入るように観たのが7歳の頃ってことはないので,おそらく再放送だったんだろう.

機動戦士ガンダムは小学生高学年から中学校までの記憶と結びついている.そのころは週に5日水泳に通っていたので,泳ぎながらガンダムのことを考えていた気がする.お小遣いでキャラクターグッズ(ビニールの書類ケース)を買うときに,アムロにするかシャアにするか,数日間真剣に悩んだこともあったな.結局どっちにしたんだっけ.

こういうのが今でも実家に残ってたりするんだよね.

Char_02 シャア専用クレジットカードを契約すると,シャア専用ザクをもらえるらしい(抽選で10,000名様).ちょっと欲しい.

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2006年10月10日 (火)

重力ピエロ

重力ピエロ先日の「死神の精度」に続き,伊坂幸太郎.

文体できちんと印象を残す.いっけんただ軽やかに進んでいくだけのようだが,読み終わってみるとがっつり心に刻みつけられているものがある.うまい,と唸ると同時に,うらやましい,と思った.

登場人物たちは超然としていたり,常人ならざる感性を持っていたりするのだが,絶妙のタイミングで挿入される心の揺れによって,地面からほんの数センチ浮いたところでリアリティがつなぎ止められている.

家族を題材とした普遍的なテーマだが,これがありきたりにならないのは,さまざまなジャンル(遺伝子,アート,映画,音楽,文学etc.)からの引用だろう.それらの内容もさることながら,井伏鱒二の「山椒魚」や太宰治の「走れメロス」からの引用で会話する兄弟って,いかしてる!

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2006年10月 8日 (日)

腐女子化する世界

「腐女子化する世界  東池袋のオタク女子たち」杉浦由美子(中公新書ラクレ)

拍手喝采! お見事!!

ルミネ町田の有隣堂で,新書の新刊本コーナーに置かれていたのが目に留まり,たいした期待もなしにただ電車内の暇つぶしのために購入したのだが,予想をはるかに超えた好著だった!

東池袋の乙女ロードに集まる30歳前後の「腐女子(男性同士の恋愛物語を嗜好する女性)」たち,というのはまさに今どきな分析ターゲットだが,表面だけの興味本位な記述にあらず.特に後半部分の切り込みは,大胆だが実に的確だ.

やみくもな自分さがしではなく,自分(あるいは自分の性)と切り離したファンタジーに没入する.自分が女性であることを否定したいのではなく,単純に,感情移入しなくてすむ物語を求めている.これって思いのほか健全で,高度な知的遊びなんじゃなかろうか.

高校時代(15年以上前),周囲にいわゆる「やおい」とか「ボーイズラブ」と呼ばれるジャンルの小説・漫画を読んだり書いたりする友人が多かったので,ごくごく自然に手に取り,これまでずっと読んできた.その間,「なぜはまるのか」という素朴な疑問に対して明快な答えを見つけられずにいた(腐女子による腐女子の分析,というのはわりとたくさんあったのだが,どうもしっくりこなかった).

で,本書を読んで長年の疑問がすっきり.もはや性差(あるいは性差別)なるもの,男性に承認されるべき性ってものに,うんざりしてるんですよ,実際のところ.その一方で,おもに消費という形で「女子」であることを満喫している.そういうアンビバレントな部分が,きっちり理解されているのが非常にうれしい.

格差社会や少子化などに関する近ごろの議論には,すっきりしないというか,違和感というか,しょせん当事者じゃない奴らの的外れなコメントだよね, と感じるものも多かったのだが,「腐女子」という概念をベースに切っていくと,ここまでクリアになるとはね.当事者としては,納得させられること多し.

本書のすべてに同意するわけではないが,これを基準に据えることによって,自分自身を理解することが可能になると思う.なるほどって部分と,これはちょっと自分には当てはまらないって部分が見えてくる.非常にエキサイティング.

ほんと,すっきりした.